ウズベキスタンの伝統と習慣

民族衣装やお祭り、伝統食など

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ウズベク人は古代から様々な文化を持ち、4世紀に遊牧生活から定住生活に変わったが、民族の大移動やモンゴル侵略時でさえ、ここの文化を変えられなかった。

8世紀前半にイスラーム教が伝わって多少の変化があったが、ウズベク文化への影響は少なく、むしろウズベク文化がイスラーム教を支配していった。

ウズベク伝統儀式は、数多くが子供の誕生と成長、結婚式と葬式に深く関わっており、その儀式はイスラーム儀式と古代魔術が融合している。ムスリムの宗教的な儀式が日常生活に入り、金曜日は祝日と考えられ、男性はモスクでナマズ(共同祈り)をする。

もちろん、現代的な生活は文化に影響を与えたが、多くのウズベクの家庭では年上を尊敬し、家長に従う習慣を何世代も存続している。ウズベクの女性は家庭では母、妻でありながら、家長である主人や主人の父や母に絶対従う。これは差別のようなものではなくて伝統的な習慣である。そして、家庭では子供が愛されるものだ。

また、家長制度はウズベクの特徴である。手厚いもてなしと先輩の方に対する礼儀正しい態度は、ウズベク家族の特性である。一般的にウズベク人は多世帯家族で同居するので、家をできるだけ大きく建てる。家に招待されたお客は、主人の子供達のためにお土産や菓子等を持参するのが習慣。女性と男性は通常別々の部屋に集まり、食事しながら会話するのも特徴だ。

伝統的な社会構造として「マハリャ」が存在し、自らの伝統や文化を持ち、隣人がお互いに助け合う習慣がある。特定の地域では、町、村、地元の自治体機関と近隣関係を持つ独特な共同体である。

ウズベキスタンの民族衣装

ウズベク人の男性は地味な背広を着て、ドッピを被っていることが多い。ドッピとはムスリムの帽子で、お祈りの時に額を床につけるので、つばのない形をしている。これも地方によって、形や色、デザインも違う。また、冬の装いはチョポンと呼ばれるガウンのような上着を着る。鮮やかな色のベルボックという帯で腰のところを結び、フェルガナ方面の男性はナイフを刺す伝統がある。

女性はゆったりしたモンペの様なズボンをはき、その上から華やかなワンピースを着る。帽子やワンピースにも刺繍の入った物が好まれている。地方のお祭りなどでは、若い女性は髪を細く長い三つ編みにするのが慣わしになっている。また、ムスリムの女性はルモール(スカーフ)を被り、髪を隠すのが、一般的な身だしなみとされている。

このような服装は、首都の中心部では殆ど見られないが、旧市街地や地方では多い。

ウズベキスタンのお祭り

■ベシク・トゥイ(誕生祝い)
ウズベク語でベシクは「木製揺りかご」を意味し、赤ん坊を揺りかごに初めて寝かす儀式。誕生の7、9、11日目の何れかに行われ、子供の母の親戚は揺りかごと子供用品等を提供する。

ダストルハンにレピョーシカ、お菓子と玩具を包んで、揺りかごと一緒に車に乗せて、民族楽器演奏をしながら、親の家に向かう。伝統により、最初は子供の母方の祖父が揺りかごを肩に載せ、子供の父の右肩に置き換えてから、最後に母親に渡す。

このとき、お客を招きご馳走を振舞い、女性達は隣の部屋で子供におむつをして、揺りかごに寝かす儀式を行う。お客は、揺りかごに寝かした子供にプレゼントを渡し、これからの人生が上手くいきますようにと揺りかごに砂糖をかけ、儀式は終わる。

この揺りかごで子供を育てる事は子供の成長に良くないとされ、現在では殆ど使われていないが、儀式としては行われている。

■ハトナ・キリシュ(割礼儀式)
ウズベク民族の習慣では、男子であればハトナ・キリシュ(割礼)を行う。男子が産まれると、親は割礼儀式のために準備する。儀式の数ヶ月前に、親戚と隣人は布団縫いを手伝い、お祝いのプレゼントの準備をする。

産まれて1、3、5、7、9才(まれに11才)になると、親戚や友達、隣人達を招き、大きなパーティを行い、割礼の伝統的な儀式をする。その日、少年の家にイマームが来て、コーランの章を読みながら、男子を祝福する。

父親は少年を抱いて祈る。同時にスナトッチ(切開する人)も祈り、割礼儀式を行う。お客達は少年を励ましながら、お祝いにたくさんのプレゼントやお金を渡し、踊って祝福し、儀式の最後にはプロフが振舞われる。

現代では、宗教的な意味ではなく、健康のため割礼する人が多い。もちろん、この場合はスナトッチによってではなく、病院で行う。

この他に、子供が産まれてから40日間はチッラと言い、外へは出かけない。また、子供が歩く頃になると、近所の子供達を集めてお菓子やコインを撒いてお祝いするチャチャラなど、子供の成長を祝う習慣がある。

ウズベキスタンの祝日

ウズベキスタンの主な国家祭日は独立記念日の9月1日で、民族祭日は3月21日のナブルーズ(ペルシャ語で新しい年)。ナブルーズは丁度、長い冬を終えて暖かくなり、自然が目覚める時期。誰もがこの祭りに心を躍らせ盛大に祝う。

各地で音楽や舞踊のイベントがあり、伝統的な“民族フェスティバル”や馬競技の“ブズカシ”(キョプカリともいう)なども行われる。家庭でも家族や親戚、近所の人達が集まり、伝統料理のひとつ“スマラク”を作る。

スマラクとは、麦芽から搾った汁を煮詰め、24時間混ぜ続けて作るウズベキスタンの春に欠かせない食べ物。味は甘く、少し苦い。スマラクが出来上がったとき、表面にできた模様でその年を占う。これを食べるだけでなく、人々が集まり春を祝いスマラクを作る行事がウズベクの伝統である。

祭日として、ラマダン(断食月)が終わった日のラマダン・ハイートやクルバン・ハイートを大きく祝う。これらの日はイスラームの主な祭日のひとつで、お祈りの後、施しをもらったりあげたりする習慣。ラマダンは、およそ8~9月に当たるが、公式には宗教的権威機関が毎月の新月を確認して始まりを宣言するので、毎年確定はできない。その時期になるとバザールなどで、日の出と日没の時間が入ったカレンダーが売られる。ハイートも正式に発表されるのは祭日の1週間位前になる。

イスラーム教

Accaлoму aлайку.(アッサローム・アレイクム=こんにちは)
「あなたの元に平和があるように」という意味のイスラーム共通のあいさつ。

ウズベクの習慣では、男性は挨拶する時に握手をし、女性は頭を少し下げながら右手を胸に当てる。男性も握手の後、右手を胸に当てて少しお辞儀をするのが、更なる敬意を表す意味になる。このとき、お互いの健康状態や仕事、家族の事を尋ね合う。

イスラーム教は、ウズベクの地にも8世紀頃に伝わり、独自のイスラーム教が発展していった。ウズベク民族の殆どがイスラーム教スンニ派である。しかし、イスラーム教の義務とされる五行は、ある程度個人に委ねられ、ムスリムであってもアルコールも飲むし、女性も自由な服装をするなど、緩やかである。

ムスリムの義務のひとつラマダン(断食月)とは、日の出から日没まで一切の飲食、喫煙、性行為などが禁じられる。これも、ウズベキスタンでは一般に実行する人は少なく、殆どの飲食店が営業しているし、通常と変わりない生活を送る。

とはいえ、日常生活はイスラーム教の影響が大きく、宗教により日常や家庭での問題が解決されることもある。色々なウズベキスタンの習慣や伝統儀式は、イスラーム教と離しては考えられない。ウズベクの人々と接する際は、イスラーム教を意識し、言動を配慮した方が良いと言える。

伝統食

ウズベキスタンの伝統食はプロフ。ウズベク風のピラフ(炊きこみご飯)である。普段の食事でも食べるし、冠婚葬祭には欠かせない物なのだ。
地方によって作り方や材料が少しずつ違い、その種類は700種類以上と言われている。プロフを作る専門の職人は「オシュパズ」と呼ばれ、尊重される。

■朝プロフ
ウズベキスタンには、朝プロフと呼ばれる儀式がある。普通、結婚式と追悼会(死後20日と1年)の時に行われている。
儀式の主催者は日付と時間を決め、親戚、知り合いと隣人に招待状を送る。朝プロフ儀式が行われる前日の夜に「サブジ・トゥグラル」(人参切り)という儀式が行われる。朝プロフへ招待される人数(最低100~500人)が多いため、プロフ材料も大量である。材料の20~50kgの人参を切るために親戚と隣人が手伝う。

早朝に、朝の祈りを読んでからお客は席につく。最初はパンと紅茶、次にリャガン(大皿)に盛ったプロフを振舞う。1枚のリャガンには2人前のプロフを盛る。プロフを食べ終わると、お客は主人にお礼を言って帰り、次のお客が来る。このように、数回繰り返し、全体の儀式には2時間ぐらいかかる。プロフは大量に作られるので招待客以外の近所の人達にもプロフは振舞われる。

結婚式の際に行われる朝プロフ儀式には、アーティストや歌手が招かれる場合もある。また、追悼会のときは、静かな雰囲気の中で、お客はコーランの章を読みながらプロフを食べる。朝プロフ儀式では、他の殆どの儀式と同じく、参加者は男性のみである事が特徴である。